借地を買おうとする人が、買った後で、借地上の建物を建て替えたいと思う場合があります。譲渡の対象になる借地上の建物は古くなっていることが多く、そこに新築の家を建てて住みたいと計画することは多いと思います。また、事業者が、借地を買う場合も同様で、借地上の住宅を取り壊して、賃貸物件を建てたいと思うのもありがちな話です。
通常の流れは、まず、借地権の譲渡の許可をもらって、移転登記など、借地権譲渡の手続をしてから、借地を買った人が、改めて、設計図面などを書いてもらって、借地上に新しい建物を建てます。ほとんどの借地の契約には、増改築禁止特約があるので、建物の建て替えをする時に、地主が承諾しない場合には、裁判所の増改築許可の申立の借地非訟手続をします。
ところが、借地非訟では、全件、鑑定委員会の鑑定をやって、承諾料などを決めます。そのため、時間がかかります。建前どおり、譲渡許可をもらってから、新しい借地権者が改めて増改築許可の申立をすると、2回鑑定委員会の鑑定をすることになり、通常、8か月かかると言われる借地非訟手続を、2回やることになります。つまり、二度手間です。
そこで、法律には明確に書いてないのですが、譲渡許可の申立と、増改築許可の申立を同時に行うことが認められています。
これについて、弁護士が解説します。
【目次】
1.譲渡の許可と増改築許可の同時申立とは
2.このような申立が認められる法律上の根拠
3.承諾料の負担者
4.地主の介入権との関係
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1.譲渡の許可と増改築許可の同時申立とは
増改築は、譲渡承諾が認められて、新しく借地権者になった人が、借地上の建物を取り壊して、新しい建物を建てることになります。
譲渡許可が認めらる前は、譲り受け予定者は、まだ借地権者ではなく、地主との間に契約関係がありません。そのため、譲り受け予定者が譲り受け前に、地主に対して、増改築許可の承諾を求めることはできません(裁判所に申し立てなければ、地主からどのような形で許可をもらってもいいので、借地権者から譲り受けることと、増改築の許可をもらうことは可能です)。ところが、裁判所に地主の承諾に代わる許可の裁判(借地非訟)を申し立てる場合には、申立人は、借地権者でなければなりません。
譲渡承諾の許可と、増改築許可の同時申立は、どちらも、現在の借地権者が、申立をすることになります。
実際には、増改築は、譲渡許可をもらって、借地権が譲渡された後で、借地権の買受人が、工事をすることになるのですが、買い受ける前は、申立ができないので、代わりに、現在の借地権者が増改築をするという形式で申立をすることになります。実際と違うことを申立書に書くことになるのですが、そのことが当然に認められています。
増改築許可の申立には、増改築が必要な理由を書く必要がありますが、現在の借地権者が増改築をしたいわけではないので、譲り受け予定者が借地権の譲り受け後に、どうして建物の増改築をしたいのか、それを申立書に書くことになります。申立の形式が、現在の借地権者が増改築の許可の申立をするからと言って、事実と違うことを書く必要はないのです。
2.このような申立が認められる法律上の根拠
現在の借地権者が、実際には自分で建て替えをするわけではないのに、建物の増改築許可の申立をするのは、このような申立を認めるための建前です。最初にお話したように、このような申立が認められないと、譲渡と建て替えが近接して行われるのに、それなりに時間がかかる借地非訟の手続を2回もやらなければならないので、その手間を解消するために、このような申立が認められているのです。
同じ申立書に書くことですから、譲渡許可の申立と増改築許可の申立のどちらが先になっても構わないのですが、理屈の上では、順番があります。
それは、増改築許可の申立が先で、その後で、譲渡許可の申立をすることになります。
なぜそうなるとかと言うと、まず、現在の借地権者が増改築の許可をもらい、その許可をもらった地位を、譲渡許可とその後の借地権譲渡(通常は借地権の売買)によって、譲り受け予定者に、移転させるという理屈です。
譲り受け予定者は、借地権の譲渡を受けて新しい借地権者になり、増改築許可をもらった地位を引き継いで、その立場で、増改築を行うことになります。つまり、増改築禁止特約の禁止がなくなった状態で、増改築を行うことができるのです。
3. 承諾料の負担者
これから借地権を譲渡しようとする借地権者をA、借地権を譲り受けて、建物の建て替えを行うとする譲り受け予定者をBとします。
譲渡許可の申立と増改築許可の申立をするのは、現在の借地権者のAになります。2つの許可をもらった後で、地主に承諾料を支払うのも、Aになります。
ただし、これは形式上の話です。特に、増改築許可は、実際に増改築をするのは、Bですから、AとBの間では、Bが承諾料を出すのが当然です。Aは、この承諾料をBから受け取って、地主に支払うことになります。
無論、譲渡承諾料の場合でも、AとBの間で、どちらが負担するのかはAとBの契約次第です(借地権の売買価格で調整できます)。ただし、譲渡承諾料は、AがBに借地権を売るためのコストの性格があるので、Aが払うのが通常です。
これに対して、増改築の承諾料は、Bの都合でAから地主に支払われるものです。Bが負担するのが当然です。また、これは借地権売買の代金とも別ですから、代金額で調整することもないのが普通です。
4.地主の介入権との関係
地主の介入権(先買い件)は、譲渡許可の借地非訟の場合にしか認められていません。単独の増改築許可の申立の借地非訟では、地主の介入権は、認められていません。
それでは、増改築許可の譲渡許可の同時に申し立てる場合はどうかと言うと、地主に介入権が認めらています。この場合の介入権は、譲渡許可が単独で申し立てられた場合と同じです。介入権の価格は、借地権価格から、承諾料相当分を引いたもの(借地権価格の0.9)で、同時に増改築許可の申立があったことは考慮されません。
また、譲渡先が借地権者の親族等の場合には、介入権が認められないことも、通常の場合と同じです。
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2.借地権の譲渡一般については、「借地権の譲渡と地主の承諾」をご覧ください。借地非訟の手続についても説明しています。
3.増改築禁止特約がある場合については「借地上建物の建て替えと禁止特約」をご覧ください。
4.増改築の許可が必要な工事と、修理、リフォームなど許可がいらない場合については「増改築禁止特約の範囲(修理と改築の関係)」をご覧ください。
弁護士 内藤寿彦(東京弁護士会所属)
内藤寿彦法律事務所 東京都港区虎ノ門5-12-13 白井ビル4階
電話 03-3459-6391
