<<定期建物賃貸借契約(定期借家契約)>>

【定期借家契約とは】
【通常の建物賃貸借契約から定期借家契約への切り換え】
【賃借人からの中途解約】
【期間満了の通知】
【再契約】
【再契約できなくても立ち退かなくていい場合】

【要件を充たすのに期間満了後に立ち退かない場合】

【定期借家契約とは】

●定期借家契約とは

 2年間の地方出張になりその間だけ自宅を人に貸したいとか、2年経ったら賃貸物件を取り壊して新しい建物を建てたいけれどもそれまでの間、人に貸したいという場合があります。
 ところが通常の建物賃貸借契約では期限を2年と決めても正当事由がなければ賃貸人の側から解約(更新拒絶)することができず、契約は更新してしまいます。また、正当事由がある場合でも、賃借人が争う場合には裁判を起こす必要があります。しかも、裁判所は、立ち退き料を考慮した上で、正当事由を認めるのがほとんどです。
 そこで、一定の期間が来たら更新せずに契約を終了させることを契約を結んだ時から決めておくのが、定期建物賃貸借契約(定期借家契約)です。

●定期借家契約の要件

 定期借家契約は
①書面で契約すること。
②契約書の文中に「契約の更新がなく、期間が満了すれば賃貸借契約は終了する」ことを明記すること
契約の前に、賃借人になろうとする人に対して、契約書とは別の文書に「これから結ぶ賃貸借契約は、期間が満了しても契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借は終了する」ということを書いて、その書面を交付して、その内容を説明する。
ことによって成立します。
 転勤や建物の建て替えなどの例をあげましたが、定期借家契約を結ぶ目的に制限はありません

 注意しなければならないのは、③です。契約の前に契約書の文案を渡して説明しただけでは、この要件を充たしません。契約書とは別の文書を渡して説明しなければなりません(最高裁平成24年9月13日判決)。
 要件を充たさない契約をして建物を貸してしまった場合は、通常の建物賃貸借契約になります。期限が来ても正当事由がなければ賃貸人の側から解約することができなくなります。
 後で問題にならないように、③の書面を渡した証拠を残す必要があります。一般的には、③の説明書を2部作り、1部はそのまま賃借人になる人に渡して説明をし、もう1部には、説明の文章の後に「契約の前にこの書面を受領し、説明を受けました。これから結ぶ建物賃貸借契約は、期間が満了すると更新せず、期間満了とともに賃貸借契約が終了して、建物を明け渡さなければならないことは分かりました」という趣旨の文章を書いておき(簡単に言うと、「説明書を受け取り、説明を受けました」という内容が1枚の紙に書いてある書面です)、その文章の後に賃借人になる人に署名と判子をもらい、その書面を返してもらって、保管しておきます。

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【通常の建物賃貸借契約から定期借家契約への切り換え】

現在、建物の一室を人に貸しています。しかし、建物が古くなったので建物の建て替えを計画しています。もうすぐ契約の更新になるので、その時に普通の賃貸借契約から、定期借家契約に切り換えてもらおうと思いますが、問題はありますか。
現在の賃借人との契約関係が不明ですが、その契約が平成12年2月29日以前に契約を締結した居住用建物の借家契約の場合には、賃借人が同意しても切り換えは認められません(更新が繰り返されていても、最初の契約時期のことです)。
 つまり、定期借家の契約をしたとしても、それは無効です。通常の賃貸借契約のままです。
 平成12年3月1日以後の居住用建物や、契約時期にかかわらず事業用の建物の場合は、賃借人の同意があれば通常の賃貸借契約から定期借家契約への切り換えが可能です。
  ただし、この契約の切り換えは賃借人にとって不利な契約への切り換えになります。そのため、何の見返りもなしに普通借家契約から定期借家契約に切り換えてくれと言っても、応じてくれません。
 切り換え後の賃料を安くするなど、賃借人も有利になることと引き換えに定期借家契約に切り換えるなどの配慮が必要です(配慮した上できちんと手続を取る必要があります)。
 なお、契約の切り換えと言っても、法律上は、それまでの普通の建物賃貸借契約を合意解除して、改めて定期借家契約を結ぶことになります。この点も注意する必要があります。単に定期借家契約の契約書を交わすだけでなく、それ以前の普通借家契約を合意解除するという書面も作った方がいいと思います(絶対に必要というわけではありません)。(*1)(*2)

(*1)普通借家契約から定期借家契約に切り換える場合、普通借家契約の期間の満了が近づき、更新の話をする時に、この話をすることが多いようです。普通借家から定期借家への切り換えは、更新ではないので、更新料は発生しません。間違えて更新料の受領をすると、後でややこしいことになる可能性があります。

(*2)通常の更新の場合、不動産の管理会社から、賃借人に更新の契約書など一式を郵送して、署名押印して送り返してもらう、ということが普通に行われています。このため、同じことを普通借家契約から定期借家契約に切り換えるときにやってしまうことがあるようです。この場合、契約の前に契約書とは別の文書を交付して、これから結ぶ契約が定期借家契約だと説明する、という手続が行われたと言えません。

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【賃借人からの中途解約】

5年間の定期借家契約を締結して建物を借り、2年が経過しましたが突然、地方への転勤になりました。家族がいるわけでもないので解約したいのですが、定期借家契約だから解約はできないと言われました。解約はできないのでしょうか。
まず、契約書の中に「契約期間中でも賃借人の申し入れによって解約できる」という条項があれば、その条項によって解約できます
 そのような条項がない場合ですが、ご質問からすると居住用ということで建物を借りていると思います。その場合、その建物(借りている部分)の床面積が200平方メートル未満の場合には、解約の申し入れをするとができ、申し入れから1か月をすると契約は終了します(つまり、解約申入から1か月分の賃料は支払わなければなりません)。

 期間の定めのある賃貸借契約は、中途解約ができるという条項がない限り、賃借人からも解約ができないのが原則です(これは定期借家契約に限りません)。
 賃貸人の側も、一定の期間は賃借人から賃料を払ってもらいたいという希望があります。このように賃借人側の解約を制限する場合にも、定期借家契約は利用されています。
 ところが時には、賃借人に酷な場合があります。そこで法律では
①事業用に借りているのではなく、居住用に借りていること
②床面積が200平方メートル未満の建物(賃借している部分のことです)
③転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったとき
という条件を充たす場合には、賃借人は解約申入ができ、解約申入から1か月が経過すると賃貸借契約は終了することになります。
 契約書に「どんな事情があっても賃借人は途中解約できない」という条項があったとしても、その条項は無効です。
 解約ができるのは、上記の場合ですから、事業用に借りている場合や、居住用に借りている場合でも建物が200平方メートル以上の場合や、やむを得ない事情がない場合には、中途解約条項がない以上、賃借人は期限まで借り、賃料の支払いをしなければならないことになります。
  ただし、一応それが原則ですが、途中解約の場合に残りの期間の賃料(または、賃料相当の違約金)を支払うという契約がどこまで有効なのかは別の問題になります。
 例えば、期間4年の契約なのに10か月で途中解約した事例で、残りの期間の3年2か月分の賃料相当の違約金を支払うことになっていた場合に、解約から1年分の違約金までを有効として、それを越える部分の違約金条項を無効とした裁判例があります(東京地裁平成8年8月22日判決)。これも事案によりけりで、一概には言えません。

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【期間満了の通知】

2年の期間の定期借家契約で建物を貸していますが、「期間満了によって契約が終了する」という通知を賃借人に出さないまま期間満了になりました。この場合はどうなりますか。
法律では「期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない」としています。従って、期間2年の契約ですから、満了の1年前から6か月前までに上記の通知を賃借人に出す必要があります。
 期間満了の6か月前までに通知を出さなかった場合ですが、3か月前になって上記の通知を出した場合には、期間の満了の日には契約は終了しませんが(*)通知を出した日から6か月後(期間満了から3か月後)に契約は終了することになります。
  問題は、ご質問のように期間満了後に通知を出した場合です。
 期間後でも通知を出せば、通知から6か月が経過すると契約は終了するという裁判例があります(東京地裁平成21年 3月19日判決など)。
 ただし、これらは、期間満了後1か月から4か月後に通知を出した事案です。
 もしも、期間満了までに通知を出さず、その後も、賃料を受領しながら契約終了の通知も出さず、1年も経ってからようやく通知を出したような場合は問題です。定期借家契約から通常の賃貸借契約に切り換えることに合意した(黙認した)と裁判所に判断される可能性もあります。

(*)正確に言うと、「賃借人に対して、契約が終了したことを主張できない」という意味です。通知がなくても、賃借人側は、期間満了で契約が終了したと主張することができます。

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【再契約】

定期借家契約を締結して建物を貸していますが、期間満了後、再び同じ賃借人と同じ条件で定期借家契約を結ぶことは可能ですか。
定期借家契約には、更新というものがありませんが、同じ当事者間で改めて同じ契約を結ぶことは可能です。あくまでも、賃貸人、賃借人の双方が合意していることが前提です。その場合でも①契約書の中で期間満了後は更新しないで契約が終了することが書いてあること、②契約の前に、期間満了後は更新しないで契約が終了することを書いた文書(契約書とは別の文書)を交付して説明すること、という手続を取る必要があります。
 要するに、もう一度、改めて定期借家契約を結ぶため、先にお話したような手続や要件が必要になります。最初の契約の時に説明したからと言って、②の手続を省略すると、普通の賃貸借契約になってしまいます。(*)
 なお、「当事者が合意すれば再契約ができる」という条項が入った定期借家の契約書を見かけます。当事者双方が合意すれば再契約できるのは当然なので、このような条項は意味がありません。かえって有害な場合があります。例えば、「更新できないと言いながら、更新できるような書き方」になっていたりすると、定期借家契約を否定される可能性もあります。

(*)再契約を何度も繰り返すケースもあります。何度も同じことをしているから、賃借人は十分に分かっている、もう説明しなくてもいいんじゃないかと思ってはいけません。最高裁平成24年9月13日判決は、賃借人が定期借家契約について十分に理解していたとしても、契約前に説明書を交付して説明する手続をしない場合、普通借家契約になると言っています。この事案は、法律や手続をよく知っている不動産業者間の取引でした。

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【再契約できなくても立ち退かなくていい場合】

借りている側ですが、飲食店経営のために定期借家契約を結び、何回も再契約を繰り返していたのに、今度は再契約しないと言われました。経営が順調ですし、内装費もかけているのでこのまま経営を続けたいのですが何とかならないでしょうか。
原則としては、定期借家契約の要件を充たしていて、終了通知も受領している場合には、期間満了で契約は終了するので、退去するしかありません。過去に再契約したとしても、再契約は、賃貸人、賃借人双方が同意しないとできません(再契約を要求する権利はありません)。
 ただし、ご相談のケースは、何回も再契約を繰り返しているとのことですが、もしも、その中で一度でも、定期借家契約の要件を充たさないで契約した場合は、その契約の期間満了後に要件を充たす定期借家契約の再契約をしたとしても、普通借家契約になってしまい、期間が満了しても契約は終了しないで更新します
 どういうことかと言うと、再契約中に一度でも要件を充たさない契約をした場合、その契約は普通借家契約になります。そのことに気がつかなくて、期間満了後にまた定期借家契約の再契約をした場合でも、普通借家契約が成立したことを知って普通借家契約を解除しない限り、一旦成立した普通借家契約が続くことになります。後で結んだ定期借家契約は無効か、普通借家契約の更新契約とみなされます(東京地裁平成27年 2月24日判決)。
 可能性があるとすれば、何回も再契約を繰り返しているうちに、契約締結前の書面による説明をしなかったケースが考えられます。前の契約の時に説明したから、もう十分に分かっているだろうと考えて、再契約が形式的になると、このような要件の不備が起こる可能性があります。書面による事前説明は、賃借人側で定期借家契約の意味を理解しているかどうかに関係なく、絶対的に要求される要件です(最高裁平成24年9月13日判決)。
  過去の契約の時に、事前に説明書の交付があったかどうかは、賃借人の記憶だけでは不安が残ります。立退を拒否したり裁判を起こす前に確認する必要があります(*)。「絶対にそんな書面を受け取ったことはない」と言うので、賃貸人側に確認したら、これ見よがし「書面を受け取り、説明を受けました」という賃借人の署名の入った書面のコピーを送られたことがありました。これが普通の対応です。一般的には、裁判の前に証拠を見せてくれと言っても拒否されますが、定期借家契約の要件についての上記の証拠は絶対的に賃貸人に有利な証拠なので、勝ち誇ったようにコピーを見せるのが普通の対応です(そのために、このような証拠を残しておくのです)。それなのに、出し渋る場合は、証拠を持っていない、つまり、説明書の交付をしなかった可能性があります(裁判を起こす場合には何回も確認して、判断します)。
 説明書を交付しなかったという場合だけでなく、それ以外の理由で普通借家契約が成立したと認められることもあります。東京地裁平成27年2月24日判決のケースは、定期借家契約の満了から、次の再契約まで数年間経過してしまい、その間に(その間も家賃を払って使用を続けていました)、契約書は交わしていないけれども、普通借家契約が成立したとみなされたというケースです(もう少し色々な事情がありました) 。このように、要件不備以外の理由で普通借家契約が成立したと認められる可能性があります。
 ただし、上記の平成24年の最高裁判決後は、賃貸人側も要件については慎重になっていると思います。飲食店のように移転が容易でない事業に定期借家を利用するのは、賃料が安いとか、エリアによっては定期借家しか結べないなどの事情があるとは言え、それなりの覚悟が必要です。

(*) 通常は期間満了後に賃貸人側から明渡の裁判を起こしますが、賃借人側から、期間満了前に、普通借家契約が成立していることの確認を求める裁判を起こすことができます(正確には、更新排除特約の無効確認の裁判です)。早期に解決して安心して営業を続けるためには、賃借人側から裁判を起こした方が有益です。ただし、裁判を起こしても、賃貸人が「書面を受け取り、説明を受けました」という賃借人の署名入りの書面を証拠に出せば、賃貸人側の勝訴で終わります。つまり、事前に賃貸人に証拠があるかどうか確認しないとおそろしくて裁判は起こせません。この点は、裁判を起こさないで期間満了を待つ場合でも同じです。移転するかどうか、賃貸人が証拠を持っているかどうかで判断しないと、判決で、何の準備もしていないのに、立ち退かなければならないことになります。

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【要件を充たすのに期間満了後に立ち退かない場合】

要件を充たす定期借家契約を結び、期間満了の6か月前までに「期間満了により賃貸借契約が終了する」という通知を出したのに、期間が満了しても、建物から退去してくれません。どうしたらいいのでしょうか。
契約違反は間違いないのですが、話してだめなら、裁判を起こすなどしなければいけません。
 裁判など起こしたくないなどと思って、ずるずる期間満了後も賃料を受け取るなどして黙っていると、期間満了後に普通の賃貸借契約を結んだとみなされてしまうこともあります。
 また、穏便に済ませようとして、弁護士に依頼しないで相手方と合意を交わすのも考えものです。契約終了を前提に、明け渡しの猶予期間をもうけて建物の明け渡しを約束させるという合意を成立させるのは、いいのですが、合意の条項を間違うと、普通借家契約になってしまう場合があります。根負けして、再度、定期借家契約を締結する場合もあるかも知れませんが、次の期間満了の時に、同じ問題が起こる可能性があります。
 相手方が平然と契約違反をしている場合には、毅然とした態度で臨むのが解決の早道です。

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