【更新料の有効性】
 (1) 個人の居住用の物件と更新料
 (2) 事業用や法人契約と更新料
【法定更新の場合の更新料の支払い義務】
 (1) 法定更新
 (2) 裁判例
 (3) 問題になった契約書
 (4) 明確に書いてあれば問題はありませんが・・・
 (5) 新賃料の1か月分と書いている場合の更新料額
 (6) 法定更新では更新料の支払いは1回だけです
 (7) 自動更新の特約
 (8) 賃貸人に有利な条項のまとめ

 

【更新料の有効性】

 

(1) 個人の居住用の物件と更新料

 建物の賃貸借契約は、通常2年程度の期間で、期間満了のときに賃借人が更新料(1か月分の賃料相当額が多いようです)を支払って、また2年程度の契約をするのが通常です。
 あたり前のように更新料の支払いが行われていますが、平成23年7月に最高裁の判決で有効という判断が出る前は、個人が居住用に借りている場合には、消費者契約法に反するから更新料の条項は無効(更新料を払わなくてもいい)という下級審の判決がいくつかありました。

 また、最高裁でも、常に有効ということではありません。契約書に金額が明記されていて(数字に限らず、「2か月分の賃料相当額」など、金額が分かるように書いてあれば問題ありません)、不当に高額でない場合という条件がついています。不当に高額とはいくらまでか、という問題がありますが、1か月~2か月の賃料相当の更新料は問題ありません。

 

(2) 事業用や法人契約と更新料

 平成23年の最高裁判決が言っているのは、あくまでも消費者契約の問題です。賃借人が居住用として個人で借りている場合にだけ問題になります。
 貸店舗、貸事務所など、事業用に借りている場合や、法人名義で借りている場合には、消費者契約ではないので、問題にはなりません
 とは言え、契約書で、更新料を支払うかどうかや、その金額があいまいな場合は、消費者契約でなくても問題になります。
 契約書に書いてあれば、更新料の金額が、不当に高額かどうかは問題になりません。

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【法定更新の場合の更新料支払い義務】

 

(1) 法定更新

 期間満了時(2年の契約期間だとしたら2年経過する前)に更新の合意をしなかった場合でも契約終了とはなりません。法律上、当然に、契約は更新します。これを法定更新と言います。法定更新後は期間の定めのない契約になります(賃貸人は、いつでも解約申し入れができます。ただし、正当事由が必要です)。(※法定更新については、「正当事由と立退料の基礎知識」の「法定更新」をご覧ください。ページが飛ぶのでここに戻る場合には「前のページに戻る」の操作をしてください。)

 

(2) 裁判例

 法定更新の場合には更新料支払い義務がない、とする裁判例があります。
 ただし、この問題は、契約書の書き方にもよります。

 「法定更新の場合にも更新料を支払う」と契約書に書いてあれば、法定更新の場合にも更新料の支払い義務があります(更新料を有効とした最高裁の判決がありますが、法定更新の事案で、契約書で法定更新の場合でも更新料を支払うことになっていた事案でした)。

 契約書の書き方の問題ですから、個人の居住用の契約か、事業用・法人契約かどうかは問題になりません。事業用だから、契約書に書いてなくても法定更新で更新料が取れることにはなりません(口約束があった場合でもいいのですが、契約書その他の書面に書いてなければ証明はできません)。

 

(3) 問題になった契約書

 法定更新の場合に、更新料の支払い義務があるかどうか問題になるのは、契約書に明確に「法定更新の場合でも更新料を支払う」と書いていない場合です。最近の契約書ならともかく、古くからの契約書では、このようなことが書いていないのが普通だと思います。
 問題になった契約書の条項は、次のとおりです。

「第4条 第3条記載の賃貸借期間満了の場合は,甲乙協議の上この契約を更新することができる。
2 前項によりこの契約を更新する場合には,乙は甲に対し更新後の賃料の1ヶ月分の更新料を支払うものとする。」

  よく見る契約条項ですが、裁判所(東京地裁平成23年4月27日判決)は、「この条項は合意更新の場合にだけ更新料の支払い義務があるという内容なので、法定更新の場合には適用されない」としました。
 確かにこの契約書では「前項によりこの契約を更新する場合」と書いてあます。その前項は「協議の上での更新」つまり、合意更新しか書いてありません。この契約書では、更新料を支払わなければならない場合を、合意更新に限定しているということになります。そのため、法定更新の場合に支払うという内容にはなっていません。単に「この契約が更新された場合には」と書いてあれば問題にならなかったと思います。

 

(4) 明確に書いてあれば問題はありませんが・・・

「第6条(更新) 更新の際,乙は,新賃料の1ヶ月分(消費税別途)を更新料として甲に対して支払うものとする。」

 これもよく見る契約条項ですが、 この条項には「法定更新の場合に支払う」とは書いてありませんが、「合意更新の場合に限る」という趣旨も読み取れません。このため、この条項は、法定更新の場合にも、更新料の支払義務があるというのが自然な解釈になります。

 このように言うと、契約書の記載があいまいだったらいいのか、と言われそうですが、そうではありません。
 どういう場合に更新料の支払い義務が発生するのか、契約書上あいまいな場合は、更新料の支払い義務自体が否定されることもあり得ます。また、明確に書いてあれば、トラブルになることもありません。基本的には、契約書に明確に書くべきです。
 「法定更新の場合にも更新料を支払う」と明確に書いてあれば、法定更新した場合に、賃借人とトラブルになることもありません。

 ただし、新規契約ならともかく、すでに契約済みの場合、更新の時に契約条項を変更することになりますが、わざわざ条項変更の理由を説明してかえって面倒なことにならないか悩ましい話になります。

 

(5) 新賃料の1か月分と書いている場合の更新料額

 前の(4)の例のように更新料の額について、「新賃料の1か月分」と書いてある契約書はよく見ます。
 更新の時に「新賃料」を決めなければならないわけではありません。従来のままにするなら、従来の賃料額が更新料の額になります。更新の時に、当事者の合意で、賃料を増額した場合には、増額した賃料と同じ額が、更新料の額になります。

 ところで、更新の時に、賃貸人側が、賃料の増額を請求したのに対し、賃借人が応じない場合もあり得ます。この場合には、合意更新ができないので、法定更新になります(賃料額について保留して、合意更新する、ということも考えられます)。
 この場合には、「新賃料」が決まらないことになります。この場合はどうなるのか、というご質問を受けることがあります。更新の時点で、賃料を変更するという合意が成立していない場合は、とりあえず、従来の賃料の1か月分が更新料を支払えば、契約違反にはなりません。

 賃貸人が賃料の増額を請求した場合には、賃借人側は従来と同じ額の賃料を支払っていれば、賃料不払いにはなりません。それと同じことです。ただし、後で裁判所が判決で賃料の増額を認めた場合には、請求の時に遡って増額になります(更新の時に増額請求したのなら更新の時に遡ります)。そのため、請求の時から、現実に支払っていた額と裁判所が認めた額の差額を支払う必要があります。つまり、更新時の「新賃料」は増額された賃料額になります。
 ただし、賃料の増額を請求しても、判決まで行かないで話し合い解決、調停、裁判所での和解など、当事者の合意で解決する場合がほとんどです(そのまま何もしないで増額を撤回したことになる場合も多いと思います)。合意解決の場合には、合わせて更新料をどうするのか(増額した賃料にするのか、それともすでに従来の賃料額にするのか)合意で決めることができます。また、合意で、賃料増額の時期をずらす(合意が成立した時から増額とする)ことも可能です。この場合には、更新料は増額前の賃料額になります。

 

(6) 法定更新では更新料の支払いは1回だけです

 例えば、それまでは2年ごとに合意更新して、その都度更新料をもらっていたとしても、更新の合意ができず、法定更新になった場合、契約書に「法定更新の場合にも更新料を支払う」と書いてあれば、法定更新になった時に、更新料を請求することができます。しかし、それから2年経過しても、もう更新料の請求はできません。法定更新では、期間の定めのない契約になるので、2年たっても3年たっても、更新しないまま契約が続くからです。

 

(7) 自動更新の特約

 法定更新だと更新料をもらえるのは1回だけで、以後は更新しないので更新料は発生しません。これを避けるのが、自動更新条項です。
 自動更新条項というのは、次のような内容です。

「第3条(賃貸借期間及び契約の更新)
2 次の各号のいずれにも該当しないときは,本契約の期間満了の日の翌日から起算して,さらに3年間更新されるものとし,以降も同様とする。
1)甲より,本契約が満了する日の6ヶ月前迄に,本契約を更新しない旨の通知があったとき。(*1)
2)乙より,本契約の期間が満了する3ヶ月前迄に本契約を更新しない旨の通知があったとき。」

 この契約書の場合、双方から更新しないという通知がない場合には更新します。法定更新と違って、期間3年の定めのある更新です。これは合意更新です。そのように予め決めてある、ということです。つまり、「協議」しなくても合意更新したことになります。このため、更新料を支払いことが契約書に書いてあれば、改めて更新の合意をしない場合でも、3年ごとに更新料の請求ができます

 この条項があると、賃借人が法定更新にして、その後の更新料を払わなくてもいいようにしたい、と思ってもできません。(*2)
 ただし、この契約でも法定更新になることがあります。賃貸人から更新しない旨の通知を出したのに、正当事由がない場合です。つまり、賃借人から法定更新にすることはできません(賃借人が「更新しない」という通知をすれば、契約は終了します)。

 

(*1) この契約書では、賃借人から更新しない通知の期間を6か月、賃借人からの通知の期間を3か月としていますが、自動更新については、自由に期間の設定ができます。しかし、賃貸人から6か月以内に更新拒絶の通知のない場合には自動更新するという条項は、賃貸人にとって不利な場合があります。
 賃貸人からの中途解約条項があればいいのですが、それがない場合には、期間満了6か月前までに更新拒絶の通知をしないと、自動更新条項によって、以後、3年間は(期間が3年の場合ですが)正当事由があっても立ち退きを求めることができなくなります。法定更新なら正当事由があれば6か月の解約期間で終了できるので、自動更新条項が不利に働きます。
 しかし、中途解約条項があれば、自動更新して期間3年の契約になっても、期間の定めのない契約と同じように、3年の期間途中に解約申し入れができます。中途解約条項については、「正当事由と立退料の基礎知識」の 「賃貸人の中途解約条項」をご覧ください。クリックするとページが飛ぶのでここに戻る場合には、「前のページに戻る」の操作をしてください)。

 

(*2) 法律上、賃借人が、期間満了の1年から半年前までに「更新しない」という通知をしない場合には、法定更新します。賃借人が契約を終わらせようとする場合には不利です。自動更新条項がある場合には、3か月前までに「更新しない」という通知をすれば、契約を終了させることができるので、賃借人に有利でする。また、契約を続けたい場合には、賃貸人が反対しなければ、期間の定めのある契約になるので、賃借人に不利な条項とは言えません。

 

(8) 賃貸人にとって有利な条項のまとめ

 ①法定更新の場合でも、更新料が発生することを契約書に明記する。
 ②自動更新条項をつける。
 ③賃貸人も契約の途中でも解約の申し入れができて6か月経過すると契約が終了するという特約をつける。

 すでに書いたことですが、上記の①から③が必要な理由は
 ①法定更新でも更新料が取れることを明記しないと、更新料が取れない。取れる場合でもトラブルになることがある。
  ②自動更新条項があれば、賃貸人から更新拒否をしない限り、法定更新にはならず、最初の契約期間と同じ期間で更新するので、その都度更新料が発生する。
  ③正当事由があって賃借人との契約を終了させたい場合、中途解約条項がないと、契約期間満了まで待たなければならない。 

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内藤寿彦法律事務所 弁護士 内藤寿彦 (東京弁護士会所属)
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