【更新料の有効性】
【法定更新の場合の更新料の支払い義務】

 

【更新料の有効性】

 建物の賃貸借契約は、通常2年程度の期間で、期間満了のときに賃借人が更新料(1か月分の賃料相当額が多いようです)を支払って、また2年程度の契約をするのが通常です。
 あたり前のように更新料の支払いが行われていますが、平成23年7月に最高裁の判決で有効という判断が出る前は、個人が居住用に借りている場合には、消費者契約法に反するから無効という下級審の判決がいくつかありました。

 また、最高裁でも、常に有効ということではありません。契約書に金額が明記されていて(数字に限らず、「2か月分の賃料相当額」など、金額が分かるように書いてあれば問題ありません)、不当に高額でない場合という条件がついています。不当に高額とはいくらまでか、という問題がありますが、1か月~2か月の賃料相当の更新料は問題ありません。

 ただし、これは、あくまでも消費者契約の問題です。
 賃借人が居住用として個人で借りている場合にだけ問題になります。貸店舗、貸事務所など、事業用に借りている場合や、法人名義で借りている場合には、消費者契約ではないので、問題にはなりません。
 とは言え、契約書で、更新料を支払うかどうかや、その金額があいまいな場合は、消費者契約でなくても問題になります。

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【法定更新の場合の更新料支払い義務】

●法定更新

 期間満了時(2年の契約期間だとしたら2年経過する前)に更新の合意をしなかった場合でも契約終了とはなりません。法律上、当然に、契約は更新します。これを法定更新と言います。法定更新後は期間の定めのない契約になります(賃貸人は、いつでも解約申し入れができます。ただし、正当事由が必要です)。(※法定更新については、「正当事由と立退料の基礎知識」の「法定更新」をご覧ください。ページが飛ぶのでここに戻る場合には「前のページに戻る」の操作をしてください。)

●裁判例

 法定更新の場合には更新料支払い義務がない、とする裁判例があります。
 ただし、この問題は、契約書の書き方にもよります。

 「法定更新の場合にも更新料を支払う」と契約書に書いてあれば、法定更新の場合にも更新料の支払い義務があります(更新料を有効とした最高裁の判決がありますが、法定更新の事案で、契約書で法定更新の場合でも更新料を支払うことになっていた事案でした)。

●更新料の支払いは1回だけです

 例えば、それまでは2年ごとに合意更新して、その都度更新料をもらっていたとしても、更新の合意ができず、法定更新になった場合、契約書に「法定更新の場合にも更新料を支払う」と書いてあれば、法定更新になった時に、更新料を請求することができます。しかし、それから2年経過しても、もう更新料の請求はできません。法定更新では、期間の定めのない契約になるので、2年たっても3年たっても、更新しないまま契約が続くからです。

●問題になった契約書

 法定更新の場合に、更新料の支払い義務があるかどうか問題になるのは、契約書に明確に「法定更新の場合でも更新料を支払う」と書いていない場合です。最近の契約書ならともかく、古くからの契約書では、このようなことが書いていないのが普通だと思います。
 問題になった契約書の条項は、次のとおりです。

「第4条 第3条記載の賃貸借期間満了の場合は,甲乙協議の上この契約を更新することができる。
2 前項によりこの契約を更新する場合には,乙は甲に対し更新後の賃料の1ヶ月分の更新料を支払うものとする。」

  よく見る契約条項ですが、裁判所(東京地方裁判所平成23年4月27日判決)は、「この条項は合意更新の場合にだけ更新料の支払い義務があるという内容なので、法定更新の場合には適用されない」としました。
 確かにこの契約書では「前項によりこの契約を更新する場合には」と書いてあます。その前項は「協議の上での更新」つまり、合意更新しか書いてありません。つまり、この契約書では、更新料を支払わなければならない場合を、合意更新に限定しています。そのため、法定更新の場合に支払うという内容にはなっていません。単に「この契約が更新された場合には」と書いてあれば問題にならなかった可能性があります。

●自動更新の場合

 契約書によっては自動更新を原則としている場合があります。次のような内容です。

「第3条(賃貸借期間及び契約の更新)
2 次の各号のいずれにも該当しないときは,本契約の期間満了の日の翌日から起算して,さらに3年間更新されるものとし,以降も同様とする。
1)甲より,本契約が満了する日の6ヶ月前迄に,本契約を更新しない旨の通知があったとき。(*1)
2)乙より,本契約の期間が満了する3ヶ月前迄に本契約を更新しない旨の通知があったとき。

第6条(更新) 更新の際,乙は,新賃料の1ヶ月分(消費税別途)を更新料として甲に対して支払うものとする。」

 この契約書の場合、双方から更新しないという通知がない場合には更新します。法定更新と違って、期間3年の定めのある更新です。これは合意更新です。そのように予め決めてある、ということです。つまり、先ほどの契約書と違って「協議」しなくても合意更新したことになります。このため、特に合意がなくても、3年ごとに更新料の請求ができます

 ただし、この契約でも法定更新になることがあります。賃貸人から更新しない旨の通知を出したのに、正当事由がない場合です。賃借人から法定更新にすることはできません(賃借人が「更新しない」という通知をすれば、契約は終了します)。

 ところで、この契約書では、第6条で「更新の際、乙は新賃料の1か月分を更新料として支払う」と書いてあります。この条項には「法定更新の場合に支払う」とは書いてありませんが、「合意更新の場合に限る」という趣旨は読み取れません。従って、この契約書では合意による更新の場合も、自動更新の場合も、法定更新の場合も、更新料の支払義務があることになります。

 なお、この例のように「新賃料の1か月分」と書いてあるけれども、「新賃料」が決まらない場合はどうなるのか、というご質問を受けることがあります。賃料を変更するという合意が成立していない場合は、従来の賃料の1か月分が更新料になります(「新賃料」と書いてあっても、特別な意味はない、ということです)。

 

(*1) この契約書では、賃借人から更新しない通知の期間を6か月、賃借人からの通知の期間を3か月としていますが、自動更新については、自由に期間の設定ができます。賃貸人から6か月以内に更新拒絶の通知のない場合には自動更新するという条項は、賃貸人にとって不利な場合があります。
 賃貸人からの中途解約条項があればいいのですが、それがない場合には、期間満了6か月前までに更新拒絶の通知をしないと、自動更新条項によって、以後、3年間は(期間が3年の場合ですが)正当事由があっても立ち退きを求めることができなくなります。法定更新なら正当事由があれば6か月の解約期間で終了できるので、自動更新条項が不利に働きます。
 どのような場合に自動更新になるかは、自由に設定できるので、期間満了前3か月程度にしておいた方がいいと思います(中途解約条項があれば問題ありません。中途解約条項については、「正当事由と立退料の基礎知識」の 「賃貸人の中途解約条項」をご覧ください。クリックするとページが飛ぶのでここに戻る場合には、「前のページに戻る」の操作をしてください)。

●明確に書いてあれば問題はありませんが・・・

 更新料の支払いが「合意更新の場合に限る」と書いてない場合には、法定更新にも適用されると言うと、契約書の記載があいまいだったらいいのか、と言われそうですが、そうではありません。
 どういう場合に更新料の支払い義務が発生するのか、契約書上あいまいな場合は、更新料の支払い義務自体が否定されることもあり得ます。基本的には、契約書に明確に書くべきです。
 「法定更新の場合にも更新料を支払う」と明確に書いてあれば、法定更新した場合に、賃借人とトラブルになることもありません。
 ただし、新規契約ならともかく、すでに契約済みの場合、更新の時に契約条項を変更することになりますが、わざわざ条項変更の理由を説明してかえって面倒なことにならないか悩ましい話になります。

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