原状回復義務・修理義務の特約と敷金返還

(目次)
【通常損耗は誰の負担か】
【事業用の物件の原状回復義務】
原状回復して明け渡すという条項と違約金
【賃借人が修理義務を負担するという特約】
【敷金が差し押さえられた】

 

【通常損耗は誰の負担か】

●敷金から差し引けるのは

 敷金は、賃貸借契約が終了し、建物の明け渡しを受けた後に返還します。
 賃借人は、建物を明け渡すときには、借りた時と同じ状態にして、建物を明け渡す義務があります。これを「原状回復義務」といいます。
 建物内に入れた家具、備品などを運び出すのは当然ですが、賃借人が建物に傷をつけるなどしてその修理が必要な場合には、賃借人がその修理をする必要があります。修理しないで賃貸人に明け渡した場合には、賃貸人は、その修理費用を敷金から差し引くことができます。
 賃借人が誤って床や壁などに傷を付けた場合に、その修理費用を敷金から差し引くことは問題がありません(ただし、貸した時から傷があったと言われる場合もあります。貸す時点で互いに点検しておくことが、後々のためになります)。

 問題になるのは、このように誤って傷を付けたのではなくて、賃借人の通常使用によって建物の床や壁などが傷んだ場合です。
 建物の賃貸借は、契約の締結から終了まで年単位になるのが普通です。そして、その間、賃借人は建物を使用しています。このため、貸した時からの時間経過と賃借人の通常の使用によって、壁紙や床など建物内部は損耗します。これを通常損耗と言います。

 建物の賃貸借契約は、賃借人が建物を使用することを前提として建物を貸し、その対価として賃料をもらう契約です。賃借人が建物を使用することは当然の前提ですから、その間の建物の通常損耗は、賃料によってカバーされていると考えらます
 このため、通常損耗については、原則として修理費を賃借人に請求することはできません。つまり、敷金からその修繕費用を差し引くことはできません。

●通常損耗について敷金から差し引ける場合

 とは言え、例外はあります。契約書に通常損耗の場合でもその修理費を賃借人が負担することが書いてある場合です。
 ただし、単に「原状回復は通常損耗も含む」と書いてあればいいわけではありません。
 最高裁判所の判決(平成17年12月16日判決)によると、「賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されている」ことが必要だとしています。なお、最高裁も、契約書に書いていなくても、賃借人に通常損耗の修理費用を負担をさせることができる場合があると言っていますが、その場合は、契約書に書いてあるのと同じように明確に合意されていることが必要だと言っています。

 どの程度、契約書に書いてあればいいのかと言うと、裁判所の扱いは結構厳しいです。
 1つ1つの項目ごとに修理費用(金額)を明記した上で、それが通常損耗による場合でもこれを賃借人が負担することが明記されている必要がある場合もあります(この点は賃借人が事業者か事業者でないかによって異なります。事業者については、「 事業用の物件の原状回復義務」をご覧ください )。

 なお、新規契約の場合はともかく、契約更新の時に新たにこうした条項を追加する場合には、契約更新前にはなかった義務を賃借人に負わせることになります。更新時に賃借人に何らかのメリットがない場合、賃借人が新たな義務を負うことを理解していなかったと判断される可能性があります。

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【事業用の物件の原状回復義務】

●原則は変わりません

 事業用の物件、特に、飲食店などの場合、契約後に内装工事をしたり、また、建物の使用中の損耗状態が居住用や事務所などと比較して、相当な損耗が生じます。
 しかし、後に述べるような特約がない場合、契約終了時の「原状回復」は、内装等を撤去して借りた時の状態に戻すこと、そして、通常損耗は原状回復の対象にはならない、ということになります。

●通常使用の損耗の程度が問題になります

 飲食店などの場合、長年使用すると、「通常に使用した」と言っても、居住用や事務所などに比べると、損耗の程度はかなり厳しくなります。
 飲食店のケースではなく、オフィスのケースですが、新築物件を賃貸したのに明け渡し時に損耗の程度が激しかった事案について、契約書に記載された「造作その他を賃貸借契約締結時の原状に回復しなければならない」との条項は、「通常の使用による損耗、汚損をも除去し、本件建物を賃借当時の状態にまで原状回復して返還する義務」を定めたものだとした裁判例があります(東京高裁平成12年12月27日判決)。
 ただし、その後の裁判例の流れを見ると、現在では、この条項ではここまでの義務を認めてもらえない可能性があります。上記の東京高裁の事案は、その賃借人としては通常使用だったようですが、契約終了時の損耗の程度がかなり激しかった事案です(新築物件を賃貸したので、損耗の程度が激しいことが分かりやすかったと思います)。賃貸人にしてみれば「オフィスの通常損耗の程度ではないだろう」と言いたくなるケースでした。

 この問題も契約でしっかり合意してあったかどうかが、がポイントになります。例えば、損耗が激しいかどうかに関わりなく、「スケトルンにして返す」と書いてあれば(スケルトンの意味も問題があるので、もっと具体的に書いてあった方がいいですが)、それは有効だと判断されます。

●居抜きの場合は話がややこしくなります

 飲食店などの貸店舗の場合、前の賃借人の造作を買い取るなどして次の賃借人が使うことがあります。このような場合、「原状回復」の内容が問題になります。問題になるのは、前の賃借人が設置したものを現在の賃借人が引き継いだのか、それとも、前の賃借人が設置したものが店舗と一体になって賃貸人のものになり、それを現在の賃借人に貸しているのかが、不明確な場合です。(*1)
 前の賃借人が施した内装などが賃貸人のものになっているとすると、それについて、新賃借人は、契約終了の時に、撤去する必要がないことになります。次の賃借人にとって利用価値のある場合はともかく、そうでなければ、賃貸人の負担で撤去しなければならなくなります。
 この種のトラブルを防ごうと思ったら、賃貸借契約を締結する際に、内部を撮影するなどして、契約終了時にどれを賃借人が撤去しなければならないのか、明確にしておくことです。それも面倒だと思えば、「居抜きの場合でも、全てスケルトンにして返す」という条項にしておくことも考えられます。
 なお、居抜きで借りた後で、賃借人がさらに内装工事をする場合もあります。この場合も、工事の前と後で写真を撮るなどしておかないと、契約をした時の「原状」というのが、何だったのか分からなくなってトラブルになります(この場合も、「スケルトンにして返す」ということになっていれば、問題はないことになります)。(*2)

 

(*1) 前の賃借人が設置したものを賃貸人が引き継ぎ、それを新しい賃借人に譲渡するという居抜きもあります。これは、設置物を新しい賃借人の所有にして、賃借人が退去する時にはそれらを撤去させることが目的です。ところが、契約書の書き方によっては問題が起こることがあります。

 

(*2)商業ビルの場合でも、「スケルトンにする」ことが明記されていなければ、賃借人はスケルトンにして返す義務はありません。無論、借りた時の状態がスケルトンの場合は、スケルトンにして返さなければなりません。

原状回復義務がなくなる特約

 めったにないことですが、原状回復義務がないことになる特約が書いてある契約書があります。契約の内容は基本的には当事者の自由ですから、契約終了時の原状回復義務を免除する特約を結ぶのは自由です。

 賃借人にとって随分、親切な話に聞こえますが、どうも賃貸人の思惑に反してこんな契約を結んでしまったようです(通常は、仲介や管理をする不動産業者が契約書を準備するので、不動産業者の責任で賃貸人に不利な契約を結ばせたことになります)。

 どんな条項かと言うと、「賃借人は、契約終了後、室内に設置した造作の所有権を放棄するものとする」とか、「賃借人は明け渡しのときは室内に設置した造作を無償にて残置するものとする」という特約です。

 おそらくは、飲食店などが建物を賃借して、費用をかけて造作を設置したのに、営業がうまくいかず短期間で契約を終了させて退去する場合を想定した条項だと思います。賃貸人にしてみれば、賃借人が費用をかけて設置した設備が自分のものになり、次の賃借人に貸す時に、設備付きの状態で賃料も高く設定できる、という思惑があったと思います。
 ところが、思惑に反して賃借人の営業が順調で、何回も更新を重ねてしまい、その後に退去することになった場合、設備も古くなり、撤去しないと次の賃借人に貸すことができない状態になります。
 そのような場合でも、先ほどの条項のままでは、賃借人は設備の所有権を放棄すれば原状回復義務を果たしたことになるので、結局、賃貸人の費用で撤去しなければならないことになります。

 結局、何が悪かったのかと言うと、契約書に「契約終了後、賃貸人の承諾を得て、室内に設置した造作の所有権を放棄することができる」と書いてあればよかったのです。そうすれば、賃貸人が引き取ってもいいと思った場合には賃借人に所有権放棄をしてもらって自分のものにできますし、使い物にならないので撤去してほしいと思えば、賃貸人は承諾しなければいいのです。また、通常どおり「原状回復する」という契約にしておいて、賃借人が退去するときに、設備を引き取る交渉をしてもよかったのです。(*1)

(*1) 裁判所などで建物明渡の和解をするときには「建物明渡後に、残置物があった場合にはその所有権を放棄して、賃貸人の処分に任せる」という条項を入れるのが普通です。残置物があっても、確実に約束の日に立退をさせるためです。また、残置物があってもその処分に困らないためにも必要です。賃借人に資力がある場合には「残置物の処分に要した費用は賃借人の負担とする」という条項を付けて、残置物をできるだけ少なくさせるとともに、残置物があっても処分費用を賃借人に負担させる(敷金から引くことも可能です)こともできます。

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【原状回復して明け渡すという条項と違約金】

明け渡しに関する違約金

 事業用の建物賃貸借の契約書には「契約終了後に直ちに建物を明け渡さなかった場合には、明け渡すまで1か月あたり、賃料額の倍額の違約金を支払う」という特約がある場合があります(事業用の場合は普通に書いてあります)。
 この特約は、有効です。(*1)
 このような特約がない場合でも、賃貸借契約が終了した場合には、これまでと同じ賃料額のお金を損害金として支払う必要があります(明け渡すまで建物をそのまま使用しているのだから当然です)。また、近隣相場よりも安い賃料で借りていた場合には、近隣の賃料相場相当の額を支払わなければならないこともあります。

 

(*1) 賃借人に落ち度がないのに建物の建替えの必要など賃貸人側の都合によって契約を終了させるときは、多くの場合、立退料と引き換えに立ち退くことになります。そのため、賃貸人側から、「更新拒絶の通知を出したのだから期間満了後は、特約のとおり賃料の倍額の違約金を支払え」と言われても、合意や裁判で立退料額が決まり、その立退料が支払われるまでは、これまでどおりの賃料の支払いをしていれば足ります(説明は違いますが同じ結論のものとして、東京地裁平成19年 8月29日判決)。

●賃貸人の指定業者の原状回復工事

 明け渡しに関しては「原状回復して明け渡す」と書いてあるのが普通です。事業用物件の場合も同じ条項が書いてあるのが普通です(原状回復義務の内容については「事業用物件の原状回復義務」をご覧ください)。

 ところが、事業用の物件の場合には、原状回復義務に色々と特約がついていて、単に室内の備品を撤去するだけでなく、壁紙の貼り替えその他、「原状回復工事」という形になるのが普通です。

 そのような工事を勝手に賃借人が選んだ業者にやられてしまうと、後で別の人に貸す時に都合が悪い状態にされてしまう可能性があります。また、賃借人は、できるだけ安く工事をやってもらいたいので、杜撰な工事をされる可能性があります。そのため、契約書には、通常は「原状回復工事は賃貸人の指定する業者が行う」と書かれています。

 このため、賃貸人の指定する業者の「原状回復工事」が終わらないと、賃借人は明け渡しができなくて、いつまでも違約金を支払わされることになりそうです。

そのため「賃貸人指定の業者が工事の見積をして、その金額を支払えば、原状回復義務を免除する」という趣旨の条項が入っている場合があります。
 ところが、見積をするのは、あくまでも「賃貸人指定の業者」です。見積額が高い(場合によっては、原状回復義務がないと思われる工事が含まれている場合もあり得ます)と思っても、その業者が減額に応じてくれなければ、原状回復工事が免除されません。しかも、見積額にクレームをつけると、業者は原状回復工事をしてくれません。
 他の業者に原状回復工事をやらせたいと思っても、賃貸人が拒否します。契約書に「原状回復工事を行うのは賃貸人指定の業者」と書いてあるので、賃貸人の承諾がないのに他の業者に工事をさせることはできません。

●原状回復工事をしないで明け渡しをする

 賃貸人指定の業者が原状回復工事しないので、いつまでも違約金(賃料の倍額など、賃料よりも高くする特約が付いているのが普通です)を支払わなければならない、というのは賃借人に酷です。だからと言って、賃貸人指定の業者の言うままに、高すぎると思われる見積額の支払いに応じなければならない、というのも不当な話です。

 この点について裁判所は、「原状回復して明け渡す」 と契約書に書いてある場合でも、「原状回復義務と明け渡しは、別」という考え方です。
 特に、「賃貸人指定の業者が原状回復工事をする」という条項の場合には、「原状回復工事をしなくても、明け渡してしまえば、違約金はそれで終了。ただし、後で原状回復工事の費用を請求されれば適正な金額については支払わなければならない」というのが裁判所の考え方です(東京地裁平成18.12.28判決など)。

 とは言え、「明け渡すと言っても、賃貸人が応じてくれないのではないか」と心配になります。実際に、賃貸人が受け取りを拒否することもあります。
 しかし、明け渡しをしなければならない場合、賃借人は、備品の搬出など自分でできることをやった上で、賃貸人に対して、明け渡しをするので受け取ってほしいと通知して、これに対して、賃貸人が受け取りを拒否すれば、やるべきことをやったことになります。その後で、部屋の鍵を賃貸人に送るなどして、賃貸人が自由に原状回復工事ができるようにすれば、明け渡しは完了したことになります(要するに、占有が賃借人から賃貸人に移転した、ということです)。

 このように言うと、原状回復などしないで鍵を送ってしまえばいいのか、と思うかも知れません。しかし、上記のとおり「やるべきことをやった」のでないと、明け渡しが認められない可能性があります。
 また、入居当時、賃借人が自分で業者を選んでその業者に内装工事をしてもらう場合があります(工事は賃貸人の承諾を得てやることになります)。このように賃貸人側では、内装の撤去など原状回復工事が難しい場合があります(*1)。この場合には、賃借人が原状回復工事をしないと(この場合は、賃貸人も「賃貸人指定の業者」に拘りません)、明け渡しとは認められないことになります(東京高裁昭和60.7.25判決)。

 

(*1)入居時の内装についても、賃貸人指定の業者でなければしてはならない、と契約書に書いてある場合があります。内装を賃貸人指定の業者がやった場合には、その撤去も、賃貸人指定の業者ができるので、問題はありません。

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【賃借人が修理義務を負担するという特約】

●原則として修理義務を負うのは賃貸人

 建物の賃貸借契約は、賃貸人が賃借人に建物を使用させてその対価として賃料をもらう契約です。
 修理しないと建物が使用できない場合、賃貸人は建物を修理する義務があります。修理しない場合、賃借人は、使用できなくなった部分について賃料の一部の支払を拒むことができます(全部使用できないわけでないのに、賃料の全額の支払いを拒むのは問題があります。この点は「その1(家賃滞納)」の「法律Q&A」の「雨漏りすると言って家賃を払ってくれません」をご覧ください)。

●賃借人が修理するという特約

 これに対し、「賃借人が修理する」という特約が付いている場合があります。
 居住用の場合は、物件に付いていた照明器具の電球が切れた場合に賃借人が付け替えるという程度ですが、業務用の場合には、建物自体の場合もあります。また、付属設備について賃借人が管理・修理するという特約をつける場合もあります。
 このような特約の趣旨ですが、まず、賃貸人には修理義務がなくなります(*1)

 しかし、それ以上に、賃借人に修理義務があるのか、という問題があります。
 賃借人に修理義務があるとしたら、賃借人が修理しない場合には賃貸人から修理するように要求されたり(応じない場合には解除が問題になります)、建物を返す時に修理費用分を敷金から引かれることになります。

 賃借人に修理義務があるかどうかは、契約書の書き方の問題でもあります。
①「壊れた場合でも賃貸人は修理をしません。直したいなら賃借人がやりなさい」という趣旨の場合は、賃貸人から賃借人に対して、修理をするように要求することはできません。また、建物を明け渡す際に、敷金からこの修理代を差し引くこともできません(賃借人が壊したので修理しなければならない場合は敷金から差し引けます)。
②これに対して、契約書の記載から、明確に賃借人に修理義務を負担させていると解釈できる場合もあります。特に、特定の付属設備について修理義務を負わせている場合には、賃貸人から賃借人に対して、修理をするように請求でき、修理しないで契約が終了した場合、その修理費用を敷金から差し引くこともできます。

 ただし、修理の程度が契約書にどこまで明確に書いてあるか、ということも問題になります。これが明確でない場合、設備の取り替えのような大修理については、賃借人には義務がないと解釈されます。
 先ほどの通常損耗の話と同じで、賃借人が修理義務を負担する範囲が明確に契約書に記載され、そのことを賃借人が明確に理解していることが必要です。

 

(*1)通常の使用中に発生する、軽微で大きな修理費用がかからないような場合は、特約で、賃貸人の修理義務がないとすることは可能です。しかし、もともと建物や設備に問題があって修理の必要が生じたような場合や、大修繕に当たる場合には、賃借人が修理するという特約があっても、賃貸人に修繕義務があるとされる場合があります

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【敷金が差し押さえられた】

 通常の敷金のトラブルとは違うのですが、敷金が差し押さえられたということで心配になり、相談する方もいます。敷金が差し押さえられたと言っても、賃貸人の財産が差し押さえられたわけではありません。賃借人の敷金返還請求権という、賃借人の賃貸人に対する債権が差し押さえの対象です。敷金は建物明け渡し後でなければ返還の必要がありませんが、このような将来の債権でも差し押さえは可能です。

・敷金が差押えられても敷金に対する権利は変わりません

  敷金返還請求権が差し押さえられても、賃貸借契約が終了して賃貸物件の明け渡しを受けるまで、敷金を返還する必要はありません。
 また、賃貸物件の明け渡しを受けるまでに発生した未払い賃料や原状回復費用などは当然に敷金から差し引くことができます。

 敷金は、建物明け渡しまでに発生した賃借人に対する債権を担保するものです。未払い賃料その他、賃貸借に伴って賃借人に対して発生した債権を、敷金から充当することができます(賃借人の側から充当するように求めることはできません)。賃借人の債権者が敷金を差し押さえても、敷金に対する賃貸人の権利は変わることはないのです。

・敷金が差し押さえられてもそれだけでは解除できません

 敷金が差押えられた、というだけでは賃貸借契約を解除することはできません(契約書にそのように書いてあっても無効です)。
 ただし、家賃が支払われなくなって滞納額が3か月分くらいになれば、契約の解除が可能になります。
 どうせ敷金が返されることになっても自分のものにならない、ということで、賃借人が賃料の支払いをストップすることはあり得ます。敷金の残額に余裕があっても、賃料の滞納期間が長くなり賃借人に支払いの意思がないような場合には賃貸借契約を解除した方がいいでしょう。

・賃借人に敷金を返してはいけません

 注意しなければならないのは、建物の明け渡しを受けた時に敷金の残金がある場合です(残金がなければ支払う必要がないことは当然です)。差押えを受けていますから、これを賃借人に返してはいけません。

 ではどうすればいいのか、ということですが、差押えをした賃借人の債権者から請求があれば(あくまでも、建物の明け渡しを受けた後ですが)、その債権者に渡すことになります。ただし、場合によっては別の債権者が差押えをすることもあり得ます。この場合はどちらの債権者にも支払いをしてはいけません。法務局に供託しなければなりません。

 また、敷金返還請求権が差し押さえられた場合、裁判所からは差押えの通知と一緒に、差押えられた債権(敷金)について支払いの意思があるかどうかなどを記載する用紙が送られてきます。これに記入して裁判所に返送することになっています。誤った記載をすると、差し押さえをした債権者に損害賠償をしなければならないこともあります。
 いずれにしても、裁判所から差押えの通知が来たら弁護士に相談した方がいいでしょう。

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  内藤寿彦法律事務所・弁護士 内藤寿彦 (電話 03-3459-6391)