※ここでは賃貸人側からのご相談、ご依頼があった場合を前提にご説明します。賃借人側も立場は違いますが、ほとんど同じとお考え下さい。

※賃借人の賃料滞納を理由に建物の明渡を求める場合は、「その1(家賃滞納)」をご覧ください。その他の契約違反を理由として建物の明渡を求める場合は、「その3」の「特約違反などの契約解除」をご覧ください。

【目次】
1.どの段階で弁護士に相談するか
2.相談
3.通知と話し合い
4.立ち退き料の提示
5.裁判
6.和解と和解の内容
7.判決
8.裁判中の賃料の支払い

 

●どの段階で弁護士に相談するか

 期間満了や建物の建て替えなどを理由として建物の立ち退きをしてもらう場合、当事者間での話し合いが難しいと思ったら、弁護士に相談することをお勧めします。
 自分では立ち退きの申入や交渉ができない、ということで、交渉前の段階で相談に来られる方もいます(立ち退きを求められる側も、立ち退きの申入があった時点で、相談に来られる方もいます)。交渉自体に、法律上の知識や交渉方法に関する知識も必要ですし、立ち退き料額がどうなるか分からないのが普通です。
 また、当事者間で交渉して、立ち退き料の金額がどうしても調整がつかないので相談に来られる方もいます。この場合、管理している不動産会社を介して交渉する方もあれば、不動産会社を介さないで直接、交渉する方もいます(*1)。条件の開きが大きくて、交渉がまとまらないので弁護士に相談するケースです。
 交渉前でも交渉途中でも、これは難しいと思ったら、弁護士に相談することをお勧めします。

 

 

(*1)不動産会社が当事者に代わって立ち退き交渉をすることは、弁護士法違反の問題があります。このため、賃貸物件を管理している不動産会社でも、この種の交渉に関与しない会社が多くなっています。

 

●相談

 相談のときには、どういう事情で立ち退きを求めたいのか、また、賃借人の建物使用状況について分かっていることをお伝えください。
 その際、立ち退き料が必要でしょうか、という質問を受けますが、落ち度のない賃借人に出て行ってくれと言うお話です。そうなると、やはり立ち退き料は必要でしょう、ということになります(契約違反などの落ち度がある場合には別の話になります)。
 いくらでしょうか、ということについては、相手次第という要素も強いので、最初のご相談の時点で明確にいくら、というお答えは難しいです。大まかな目処や、裁判例などを前提としたご説明は可能です(立ち退き料の相場・基準については「立ち退き料の相場」をご覧ください)。
 今後の手続や、弁護士費用などの説明、その他、弁護士に依頼する前提としてお知りになりたいことはご説明します。
 できるところまでは自分でやる、という方もいますが、そのようなご相談もお受けします。

 

●通知と話し合い

 ご依頼を受ければ、更新拒絶や解約申入の通知を内容証明郵便で出します(依頼前に内容証明で通知している場合には、弁護士が依頼を受けたことを伝える文書だけを送ることもあります)。
 なお、交渉を開始する前の通知ですが、ネットで見つけた文例を見ながら書けるという方もいますが、裁判になった時に不利な証拠になるようなことは書かないように注意しなければなりません。
 また、相手によっては感情を害して余計な争いになることもあります(感情的になって徹底抗戦をするということもあります)。裁判まで考えるのなら、文書の作成、送付からその後の対応(交渉ということになります)も含めて、弁護士に相談した方がいいと思います。

 文書の内容については、事案にもよりけりですし、弁護士の個性もありますが、まだ、一度も正式な交渉をしていないような場合は、正式な更新拒絶の通知を送る前に、立ち退いてもらいたい事情を説明する文書を送り、交渉に入ることも考えられます。
 なお、正式な更新拒絶通知を出さないと、期間満了で更新してしまいます(特に自動更新条項がある場合には注意しましょう)。話し合い継続中でも、一応、「形式として内容証明郵便で更新拒絶の通知を出します」と断った上で、更新拒絶の通知を出すこともあります。更新拒絶の場合は期間満了の6か月前までに出さなければなりません。

 この間に話し合いで解決できる場合もありますが、話し合いで解決できない場合でも、相手方の立場や希望、要求を裁判の前に聞いておくことは意味があります。ただし、時間稼ぎのためかあいまいにする相手方もいます。その場合には、準備ができ次第、調停申立をしたり、裁判を起こします(後でもお話しますが、6か月の期間満了を待つ必要はありません)。

 なお、建物の老朽化を理由とする場合でまだ耐震検査をしていない場合や、立ち退き料の評価を不動産鑑定士に依頼する場合など(オフィスや店舗の場合です。住居の場合は、不動産鑑定士に依頼することはほとんどありません)、この段階で、検査や評価の依頼をします。6か月の期間は、そのための準備期間の意味もあります。耐震検査は、更新拒絶などの正当事由の基礎になるので、訴えを起こす時に必要になります(検査すればほぼ確実に耐震強度不足という結果が予想される場合には、検査しないで調停を起こすこともありますが、正式裁判の場合には、検査が必要です)。立ち退き料については、鑑定士の意見を聞かないと交渉できないことが多いので、とりあえず、正式書面を作る前の段階で意見を聞くこともあります。(*1)

(*1) 立ち退き料の算定のために、店舗内の備品や内装、賃貸人の売上や費用、従業員の給与などを調べる必要があります。賃借人側に立ち退き料の不動産鑑定をすることを説明して、それらの資料を出してもらえればいいのですが、拒否される場合もあります。飲食店など不特定の人が出入りできる場合や、交渉などのために物件内に立ち入ることができる場合には、備品や内装はある程度、把握できます。経理関係の資料を賃借人側で出してくれない場合には、不動産鑑定士は、統計資料などから推計します。売上などが実際よりも少なかった場合(賃借人に不利になっていた場合)は、裁判になった後で、賃借人側が実際の売上などを明らかにするので、不動産鑑定士に訂正してもらえば足ります。

 

立ち退き料の提示

 ほとんどの立ち退き事案では、多かれ少なかれ、立ち退き料を支払うことで正当事由が認められます。立ち退きの交渉は、立ち退き料の交渉になる場合がほとんどです(中には、なかなか具体的な金額を口にしない賃借人もいますが)。

 ところで、いつ、賃貸人側で賃借人側に、立ち退き料の額を伝える必要があるのでしょうか。例えば、最初の通知(更新拒絶や解約申入の通知)の段階で、立ち退き料としていくら払うと書かなければならないのでしょうか。
 答えを言いますと、法律上は、裁判をやるなら、裁判が終わるまで(次回判決となる前)には、正式に立ち退き料の提示をする必要があります。それ以前は、法律上は立ち退き料の提示の必要がないことになります。しかし、裁判になれば、和解の時には裁判官に立ち退き料額の心づもりを伝える必要がありますし(裁判官がそれをストレートに相手方に伝えるのかどうかはその時の状況によります)、交渉段階でも相手方に支払おうとする立ち退き料の額を伝えないと交渉になりません(*1)。

 しかし、更新の拒絶の通知には、更新の拒絶をすることだけを書いて、立ち退き料を払うかどうか何も書いてなくても、法律上の問題はありません。解約申入の通知も同じです。(*2)
 また、裁判を起こす段階でも、立ち退き料を払うかどうか何も書いてなくても法律上の問題はありません。どうするのかは、それまでの交渉の経過や予想される展開で判断します(*3)

 また、最終の提示までに、 金額を増額するのも自由です(減額するのは勧められません。しかし、ご本人が交渉して交渉段階で提示した金額を、弁護士が就いて裁判を起こす段階で減額するのは、不動産鑑定士の意見を聞いたなどの理由があれば、悪影響はありません)。

 なお、提示というのは、「払う」という主張だけで足り、実際にお金を見せる必要はありません
 裁判所は、判決をする場合には、最終提示を見た上で、判断します。ただし、後でもお話しますが、裁判所は、その提示額以上の金額を支払うのと引換に建物の明け渡しを認める判決を書くこともできます。
 それは、「これだけ出すとは言っているが、立ち退きを認めると言えば、あともう少しは払うだろう」と思われる金額です(2倍、3倍でもいいとされています)。
 しかし、裁判の途中で「絶対にこれ以上出さない。これでダメなら明け渡しは諦める」と言っていた場合(裁判官からもっと金額を上げるように説得を受けて拒否したような場合です)には、それを尊重して明け渡しを認めない判決を書きます。

 いずれにしても、立ち退き料の金額は、裁判が終わるまでに正式に提示する必要があります。正式な提示というのは、訴えの内容を「立ち退き料○○円を支払うのと引き換えに建物を明け渡せ」という内容にすることです(最初の訴えの段階からこのような訴えをしていて、金額を変えない場合はそのままです)。裁判所で和解交渉をしているので、裁判官が判決でどういう金額を書くのはかはだいたい見えてくる場合もありますが、分からない時は分からないです。それでも、訴えが認められないくらいなら、裁判官が適当と考える金額を出すということで、具体的な金額の他、「裁判所が適当と考える金額」という提示をする場合もあります。
 このような提示をして、予想外に高い立ち退き料の判決が出た場合、控訴できないわけではありませんが、控訴審でやりにくいことは間違いありません。このため、例えば2000万円が妥当と思っているのに、賃借人側が、依頼した不動産鑑定士の意見書を引用して、1億円などと言っている場合には、そんな金額を裁判所が認めるはずがないと思っても、「裁判所が適当と考える金額」とは書きにくいです(依頼者が「裁判所が言うなら1億でも出す」と言うならいいですが)。 

 

(*1) 交渉段階では、賃借人側が「出ていくつもりはない」という回答でそれ以上、話が進まないこともあります。また、話し合いををすること自体も拒否する場合があります。時間の引き延ばしが目的だと思われる場合には、裁判を起こします。

 

(*2) 最高裁平成 3年 3月22日判決でこの問題が解決しました。それ以前は、更新拒絶や解約申入の時に立ち退き料の提示が必要で、立ち退き料額を変更(増額)する場合には改めて解約申入が必要ではないかとか、変更したらそれから6か月経過するのを待つ必要があるのではないか、など混乱していました。この最高裁判決で、更新拒絶や解約申入の通知に立退料額を書く必要はなく、増額の時に通知したり、それから6か月待つ必要はないことになりました。

 

(*3) 通知の段階では書くこと自体難しい場合が多いです。しかし、訴え提起の段階で立ち退き料の提示をしないと、裁判に時間がかかるという問題が起こります。多くの場合、賃貸人側は、早く勝負を仕掛ける必要があります。そのため、訴えを起こす段階で、全ての証拠や主張をそろえる必要があります(その後の進行で必要があれば追加します)。つまり、訴状の段階で、不動産鑑定士の意見書を証拠に出して、「立ち退き料○○円を支払うのと引換に建物を明け渡せ」という訴えを起こします。

 

●裁判

 裁判と言っても、調停の申立から始める場合もあります。調停ではなく、最初から訴訟(普通の裁判)の場合もあります。どちらにするのかは、ケースによりけりです。要求に開きがあり過ぎる場合には訴訟にするのが一般的ですが、そのような場合でも、調停申立をする場合もあります。調停で解決できない場合には、調停の後で裁判を起こすことになるので、調停にかかった期間(半年程度)、回り道をしたことになります。しかし、調停で解決すれば裁判よりも早く解決します。
 調停で解決しない場合や、最初から裁判の方がいいと思う場合には、裁判(訴訟)を起こします。

 調停や裁判を起こす時期ですが、期間満了まで待つ必要はありません。満期前でも可能です(この場合は、「満期になったら、建物を明け渡せ」という判決を求めることになります。これを「将来請求」と言います)。賃借人が立ち退きを拒んでいて、期間が満了しても自発的に退去しないことが予想されるという理由が必要になります。交渉段階でそのことが分かるはずですから、特に問題はありません。裁判もそれなりに時間がかかるので、期間満了前に訴えを提起しても、裁判をやっているうちに期間満了した、ということは珍しくありません(満了までに裁判を終わらせなければならない、ということもありません)。

 なお、調停も裁判も、とりあえずご本人は出頭の必要はありません。なかなか和解が成立せず、裁判官が本人からお話を聞きたいという場合がありますが、そのような場合は希です。

 裁判になった場合、最初のうちは賃貸人側、賃借人側それぞれの事情を書面に書いて、証拠と一緒に提出します。書面は弁護士がご本人と打ち合わせをした上で書きます。証拠も、「このようなものはありますか」という形で弁護士からご本人にお願いして集めてもらったり、弁護士が直接、集めたりします。

 賃貸人が不動産鑑定士の意見を出すと、賃借人側も、不動産鑑定士が作成した、立ち退き料の意見書を出す場合もあります(結構、普通です)。その場合、依頼した鑑定士にお願いして、反論の意見書を作成してもらい、それを証拠として出す必要があります。

 

●和解と和解の内容

 話が煮詰まってくると、裁判官は和解ができるかどうか打診してきます。お互いの事情はそれ以前の書面ででているので、基本的には立ち退き料をいくらにするのか、という話になります。
 和解は接点の探り合いになります。裁判官も和解で終わらせたいことが多いらしく(*1)、説得しやすい方を説得する傾向があるようです。ただし、強気になり過ぎて、無茶なことを言っていると、元も子もなくなる可能性があります。

 和解で解決する場合には、まず、和解の日をもって建物の賃貸借契約を合意解除します。これは、借地借家法の効力を取り除くためです(短期間の賃貸借契約を結ぶと、またまた正当事由がないと終了させられなくなります)。このように賃貸借契約を合意解除しますが、建物明け渡しまでは、賃借人側は、それまでと同様に建物を使うことができます(和解の条項には特に書きませんが当然のこととされています)。それから、建物の明け渡しの猶予期間を決め、猶予期間が終了するまでに、立ち退き料と引換に建物を明け渡すことにします。そして、猶予期間中、使用損害金という名目で賃料相当のお金を支払ってもらいます。それまでの賃料の支払い先の口座に振り込んでもらうのが普通で、支払いの時期も、賃貸借契約が「当月末日までに翌月分賃料を支払う」ということなら、当月末までに翌月分の使用損害金を支払うことにします(使用損害金の先払いはちょっと不自然ですが、問題はありません)。そして、明け渡しが月の途中なら、それまでの日割り分を差し引いて当月分の賃料を返します。(*2)
 このような内容の和解条項が書いてある和解をします(裁判所が「和解調書」を作ります)。この和解は、裁判官の目の前で、双方の代理人弁護士が直接、顔を合わせて締結するため、当事者が判子を押すことはありません(これもよく質問されます)。

 

(*1)一般的に、民事事件は、互いに納得して解決する和解がよいと言われています。しかし、中には白か黒か決着を着けなければならない案件もあります。正当事由を理由とする建物明け渡しは、白黒はっきりさせるものではないので、和解で終わらせるのが妥当なことが多い案件です。

 

(*2) この他、和解の条項の中に必ず入れる条項の中に、「明け渡しの時に賃借人が建物内に残したものは、その所有権を放棄して、賃貸人にその処分を委ねる」というものがあります。これは、確実に期限内に明け渡しを完了させるために必要な条項です。また、後日のトラブルの防止にもなります。

 

●判決

 どうしても和解ができなければ判決になります。
 立ち退き料の支払いを条件に明け渡しを認める判決が出た場合ですが、この種の事件では、判決が出た後で話し合いをして強制執行をしないで明け渡してもらうこともあります。(*1) (*2)

  判決で立ち退きが認められた場合、立ち退き料の金額がこちらで提示したものや、そうでなくても予めここまでなら払うと決めていた金額の範囲内なら問題ありません。
 しかし、それ以上の金額の判決がでる場合もあります(提示額の3倍以上の立ち退き料の支払いと引き換えに建物の立ち退きを認める判決もあります)。ただし、和解の段階である程度の予想ができます。裁判官も、提示額を越えても、この金額の立ち退き料だったら支払うだろうという予想で、提示額を越える金額の判決を書きます。その金額では絶対に立ち退き料を支払わないと思われる時(そのことは和解の時にだいたい分かります)は、訴え自体を認めない(請求棄却)の判決を出します。(*3) (*4)

 

(*1)立ち退き料と引換に建物の明け渡しを認める判決に「仮執行宣言」が付いた場合、賃借人側が控訴したとしても、賃貸人側は強制執行をすることができます(立ち退き料との引換が条件になっているので、強制執行のためには、立ち退き料を先に支払うか供託の必要があります。供託は、立ち退き料を支払おうとしたのに受け取りを拒否されたことが前提になります)。
 ただし、家賃滞納が理由になって建物の明け渡しを命令する判決の場合、ほぼ100%、仮執行宣言が付きますが、正当事由が問題になって建物の明け渡しを命令する判決の場合、仮執行宣言が付くかどうかは五分五分です(猶予期間なしで立ち退かせるのは酷だという判断や、高裁で和解させるために仮執行宣言をつけない場合もあります)。仮執行宣言が付かない場合には、控訴されると高裁で決着がつくまで強制執行できません。ただし、地裁では争っていた場合も、高裁になると和解で決着が着くことが多く、その場合には強制執行ではなく、和解で決まった立ち退き料を支払って明け渡しを受けることになります。
 なお、高裁は、控訴理由書の提出を待って第1回の期日を開くため、判決から第1回まで3か月~4か月ほどかかります。しかし、通常は1回期日で終わり、判決の言い渡し日の指定をしてから、それまでの間に和解ができるよう調整するので、一審ほどには時間はかかりません。

 

(*2)賃借人側としては、新しい移転先を見つけ、内装などの工事が必要ならそれらの工事が終わってから移転する必要があります。このため、建物の明け渡し時期について猶予期間の設定して、立ち退き料の支払いと引換に建物を明け渡してもらうよう合意することが円満な解決になります。

 

(*3)この種の判決は、「立ち退き料○○円を払うのと引き換えに建物を明け渡せ」という内容になります。判決に書いてある金額の立ち退き料を払わなければ建物の明け渡しを求めることはできませんが、建物の明け渡しを諦めてしまえば、お金を払う必要ありません。ただし、判決の前に提示した立ち退き料と格段にかけ離れた額の立ち退き料ではない場合には、賃借人から「建物を明け渡すから、立ち退き料を支払え」という裁判を起こされる可能性があります。判決ではなくて、和解の場合には、立ち退き料の支払い義務がある、という内容になります。

 

(*4) 裁判例の中には、賃貸人側が出せる金額以上の立ち退き料の支払いと引き換えに建物明け渡しを認めた裁判例があります(裁判官は、出せると判断したと思いますが)。その事案では、賃貸人側は、明け渡しを受けるのを断念し、立ち退き料の支払いをしなかったのですが、賃借人側が、立ち退き料を支払うように求める裁判を起こしました。これに対し、裁判所は、「賃貸人の提示金額と判決の立ち退き料額が格段に違う場合には、立ち退き料の支払い義務はない」、としました。提示金額が4000万円だったのに対し、判決の立ち退き料額が8000万円だった事案です(福岡地裁平成8.5.17判決)。

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裁判中の賃料の支払い

訴えを起こした後で、賃料が振り込まれたらどうしたらいいんでしょうか。」という質問をよく受けます。
 賃借人側から相談を受ける時も、「賃料を振り込んでいますが、裁判起こされたら、供託でしょうか。」という質問を受けます。
 これに対しては、「いえ、どこでもそうですが、裁判の決着が着くまで、これまでと同様、賃料は受け取ってください。受け取りを拒否する必要はありません。」とお答えします(賃借人の方には「受け取り拒否はありませんから、供託の必要はありません」と回答します)。

 実際の話、家主都合で「立ち退き料払うので建物を明け渡して」という裁判の場合には、裁判が始まっても、普通に賃料の授受がおこなわれています。(*1)

 なお、建前上は、「立ち退き料○○円を払うのと引き換えに建物を明け渡せ」という判決が出ると、契約上の期間の満了時に正当事由があり、その時に契約が終了したことになります。そして、裁判中に賃料として払っていたお金は、建前上は、契約終了までは「賃料」で、契約終了後は使用損害金を支払っていたことになります。
 しかし、使用損害金の金額は、賃料の額と同じですから、区別する意味はありません。また、立ち退き料を払わないと建物明け渡しの強制執行はできないので、実質的には、立ち退き料を払った時に契約が終わることになります。
 このため、この種の裁判では、賃料は普通に支払われ、賃貸人側も黙って受け取っています。

 なお、契約書に「契約終了後に建物を明け渡さない場合には、賃料の2倍の損害金を支払う」という特約がある場合があります(店舗、オフィスの契約には普通この特約があります)。そこで、正当事由を理由とする更新拒絶の裁判で、建物の明け渡しとともに「期間満了の時から賃料の2倍の損害金を払え」という請求をした事例があります。もしも、この種の請求が認められることになると、賃借人は、早い段階で妥協しなければならなくなります。しかし、東京地裁平成19年 8月29日判決は、正当事由に基づく建物明け渡しの場合には、この特約は無効としました。

 なお、和解によって終了する場合の、猶予期間とその間の賃料相当の使用損害金については、「和解と和解の内容」をご覧ください。

 

(*1) 無断転貸、その他の契約違反で賃貸借契約を解除する場合、解除後に、賃貸人が賃料を受け取ると、解除の無効を認めたことになる、という問題があります。そのために受け取りを拒否することもあります。ただし、解除後も賃借人は建物を使っているので、賃料相当額の損害金が発生します。そこで、賃料の振込があった場合、「賃料ではなく、使用損害金として受領します」という通知を出す場合もあります(返さないなら、この通知を出します)。
  

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内藤寿彦法律事務所 弁護士 内藤寿彦(東京弁護士会所属)
事務所 東京都港区虎ノ門5-12-13白井ビル4階 電話・03-3459-6391