現物分割では何が問題になるのか
現物分割という場合、二つの場合があります。一つは複数の共有土地があり、それを共有者間で分ける場合です(このような現物分割が可能なことは、最高裁昭和62年 4月22日判決)。もう一つは、一つの土地しかない場合で、その土地がある程度広い場合に、これを共有者間で分ける場合です。複数の土地がある場合でも、どちらの土地がほしいということで話がまとまらないことがあります。また、一つの土地しかない場合には、どこで土地を分けて、そのうちのどちらを誰が取るのかでもめる場合があります。
ここでは、簡単そうで簡単ではない、共有不動産の現物分割について、複数の不動産がある場合と、一個の不動産しかない場合について、弁護士が解説します。
【目次】
1.複数の不動産がある場合の現物分割
(1) 実質的には一つの不動産の場合もあります
(2) 複数の不動産の場合の分割のルール
ア.誰がどれを取るのか争いがない場合
イ.どの不動産を取るのか争いがある場合
2.1個の土地の現物分割
(1) 図面上で合意ができなければ困難です
ア.その土地の個性からして無理な場合もあります
イ.測量図による分割を裁判所に認めてもらう
(2) 共有土地の上に建物がある場合の現物分割
ア.共有土地上に共有者の1人が所有する建物が建っている場合
イ.共有土地上に共有者全員が共有する建物が建っている場合
ウ.第三者が所有する建物が建っている場合
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1.複数の不動産がある場合の現物分割
(1) 実質的には一つの不動産の場合もあります
共有は、相続から始まることが多いです。親が、最初は一個の不動産を持っていて、次第に近隣の不動産を買い増しして、一体として利用している場合もあります。
このような場合、買い増しの都度、合筆の登記をして、登記上、一個の不動産にしてしまえば、一個の不動産として分割ができます。しかし、このような合筆をしないで、不動産の買い増しをして、複数の筆の不動産がひとまとまりになった場合、ややこしい話になります。
この場合、それぞれの土地の境界が不明です(所有していた親にしてみれば、隣り合っている土地が全部自分の所有土地なので、境界は問題になりません)。さらに悪いことに、登記簿上の面積が、実際の土地の面積と一致していたのかどうかも不明です。
住宅地のど真ん中にこのような広い土地があり、その現物分割が問題になった時に、土地家屋調査士(いわゆる測量士)にこれをどうやって分けるのかと聞いたら、複数筆の土地を全て合筆して1個の土地にして、それから測量して、共有者間の取り分が合意できたら、改めて分筆する、とのことでした(誰が何を取得するのか調整するのは弁護士の仕事です)。
さて、このような実質的には1個の土地の場合もありますが、複数の土地がそれぞれ別の場所にあって、接触していない場合もあります。このような場合には、基本的には、それぞれの土地を共有者のうちの誰のものにするか、ということで協議することになります(最高裁昭和62年 4月22日判決)。
しかし、複数の不動産が全て、同じ広さ、同じ価値ということもあり得ません。多少の差なら、その差を賠償金で埋め合わせて、それぞれの共有者のものにすれば足ります。
ところが、例えば、二つの土地があり、一つの土地は、家一軒が建っているのにぎりぎりの広さしかないのに、もう一つの土地は、標準的な家が複数建てられる場合もあります。その分、広い土地は値段も高くなります。このため、全額賠償で1人の共有者に取得させるのが適当でなく(予算的に支払えない場合もあります)、広い土地については、これを複数の土地に分ける(現物分割する)、という場合もあります。
このような複数の不動産と言っても、実質的には一つの不動産だったり、一つの土地を分割しなければならない場合も起こります。
(2) 複数の不動産の場合の分割のルール
ア.誰がどれを取るのか争いがない場合
複数の土地がある場合でも、土地の使用の方法などから、誰が考えても、この分け方しかない、という場合は話は簡単です。例えば、土地Aは、共有者の1人甲が使っていて、もう一つの土地Bは、共有者乙が使っていて、土地の価格にも差がない場合には、土地Aは甲が取り、土地Bは乙が取る、ということで話はまとまります。
AとBの土地に価格の差がある場合には、一部賠償(差額金の支払い)の問題が起こりますが、土地の価格が分かれば、差額(賠償額)も分かります。話し合いで解決しなければ、最終的には、裁判所の鑑定(裁判所が指定した不動産鑑定士による不動産の価格鑑定)で土地の差額を決めることになります。
イ.どの不動産を取るのか争いがある場合
複数の不動産がある場合でも、共有者双方が、「自分はこれがほしい」と言って一つの不動産を取りたがり、譲らない場合があります。このような場合、その不動産を誰が取得するのかは、原則として、その不動産と共有者との関係性によって決まります。
例えば、その土地上に自宅があれば、その共有者がその土地を取ることなります(その上で、価格差があるので、賠償金の支払いをする必要があります)。その不動産上に住んでいない場合も、関連性があるとされる場合もあります。
ややこしい例ですが、2つの土地が接続していて一つの土地のようになっていて、それぞれの土地の上に1棟ずつビルが建っていて、そのうちの1棟が、1~4階までと5、6階が区分所有になっていて、1~4階は、甲が株式の過半数を持っている会社所有になっていて、土地を借りている(借地ですが地代は安いです)という事案でした。甲は、その建物の5、6階と敷地の所有権を取得したいと言いました。
これに対して、乙は、もう一つの土地の所有権と、その上のビルの所有権(こちらに乙の自宅がありました)と、甲がほしがっていたビルの5、6階とその敷地の土地を取りたいと言いました。
この場合、問題のビルは、1階から4階が甲の会社が区分所有権を持っているので、甲が5、6階を取得すると、甲がそのビルをまとるごと第三者に譲渡することができます(一応、会社所有ですが、甲が支配している会社なので、実質的には甲が自由に処分できます)。乙は、5、6階に両親が住んでいたので、甲が処分してしまうことに不満で、何としても、ビルの5、6階を甲に渡したくありません。
そこで、色々なところに相談したのですが、どこに行っても、ビルの5、6階は、甲と関連があるので、乙が買い取りたいと言っても、無理だと言われたとのことでした(*1)。
実際の事案は、遺産分割で、乙が姉妹の丙から相続分の譲渡を受けて、さらに、高額の鑑定料がかかりましたが、裁判所の鑑定人による鑑定をやり、預金や甲の会社の株式の分割、他の不動産の分割などなどの結果、最終的に問題のビルの5、6階とその敷地も、乙が取得することができました(甲は代償金額が高額になり過ぎたため、ビルの5、6階の取得を断念しました)。
しかし、遺産分割や共有物の分割の原則から言えば、甲とビルの5、6階との関連性から、甲がビルの5、6階を取得するのが普通です。
わざわざややこしい例でお話をしましたが、関連性と言っても、さまざまなパターンがあり、その強弱もさまざまです。弱くても、とりあえず、関連性があれば、それがある者に、その物件を取得させることになります。
しかし、甲、乙ともに相手に勝る関連性がなければ、帰属が決められないことになります。そのような場合として考えられるのは、例えば、親が所有していて、甲、乙ともに管理もしていなかった収益物件(アパート)などです。
このような場合でも、他の不動産がどうなったのかで決められる場合もあります。他の不動産が、甲や乙と関連性があって、どちらかに帰属させるのが妥当な場合などは、関連性に優劣のない物件は、取得しなかった者に取得させることになります。
(*1) この事案では、甲はこのビルには住んでおらず、1階から4階は甲が支配している会社が所有していましたが、会社は、甲、乙の父親が所有していた不動産を管理するための会社でした。このため、1階から4階は全てテナントが入っていて、会社の業務自体は、テナント管理だけです。そのため、実際の業務は、甲が自宅で不動産管理会社と協議しながら行ってきました。このような関係ですが、甲が5階、6階を取得すると、甲がビル全体を処分できるという客観的な関係性が重視されます。両親が住んでいたので、手許においておきたい、という乙の心情は、主観的なものなので、関連性は弱いとされます。最高裁昭和62年 4月22日判決は、「現物分割は、当該共有物の性質・形状・位置又は分割後の管理・利用の便等を考慮すべきである」と言っています。「分割後の管理・利用の便」というのが甲に当てはまります。(▲本文に戻る)
2.1個の土地の現物分割
(1) 図面上で合意ができなければ困難です
ア.その土地の個性からして無理な場合もあります
調停委員の経験のある弁護士が、講演で、「1個の土地の現物分割は、無理です」と言いました。
遺産分割のかなりの例で、現物分割の希望があるようですが、道路の位置、面積、土地の形状などなど、それぞれの土地に個性があり、どの部分を取りたいのか、話がまとりません。合意して作られた土地全体の測量図があっても、どこを取るのか話がまとまらなければ、分割はできません。
土地の面積が2500㎡もあって(住宅地の中の土地です)、共有者は4名。土地に接する道路は2つしかなく、現物分割するためには、土地の中に道路を新たに設置する必要があります。500㎡以上の土地に道路を通す場合には、開発行為になって、都の許可が必要になります。しかし、開発道路は建築基準法上の道路になるため、開発道路に沿った部分は建築基準法上の接道を充たすことになります。
こんな事案ですが、4名のうち、1名は弁護士が就いていますが、3名は就いていません(調停なので裁判所が妥当な分割をしてくれると思ったとのことでした)。
こうなると、1名の弁護士ががんばらないと話が進みません。
7年もかけて、ようやく、図面上に4名の分割案ができて、合意が成立寸前になったのですが、土地の中に設置する道路が開発道路で、開発行為が必要だという話になりました。手続にどれくらいの手間と時間がかかるのかは分かりません。さすがにその弁護士もこのまま調停を続けることを断念して、法定相続分で遺産分割するということで家裁に調停に代わる決定を出してもらいました。そして、通常の共有物分割の裁判を提起しました。裁判にしたのは、3名に弁護士を付けてもらうためです。
弁護士が就けば、合意の内容で3名を説得して話が進められるという判断だと思います。そして、1年かけて細部の調整もして、家裁での最終案に近い内容で現物分割をする(そのような和解をする)というところまで話が進みました。ところが、今度は、最初から弁護士をつけていた1名が、内容が気に入らない、ということで、話をひっくり返しました。
2500㎡もある住宅地内の土地ですから、1名が全体を買い取ることは資金的にできません。そうなると、判決は、競売で共有持分に応じて代金を分けるという内容になります。
しかし、それも納得できないということで、自分に都合のいいように現物分割するという内容の意見を出しましたが、開発道路は事前相談先の区から形状を変更するように言われていたため、図面どおりにはいきません。しかも、この道路がないと、道路に接しない部分ができてしまい、建物を建てられない土地を取得する共有者ができてしまうのですが、判決で、開発道路の設置を命じることはできません。つまり、合意がないと、現物分割はできなかったのです。
最終的には、競売の判決後の控訴審の途中で任意売却することがきまり、土地全体の任意売却で分割は終了しました。
イ.測量図による分割を裁判所に認めてもらう
隣地所有者に境界確定をしてもらった上で、希望する分割線を図面に示して、この分割を裁判所に認めてもらうことは、理屈では可能です。
しかし、他の共有者が争う場合には、裁判所としても、その分割線での分割を認めていいのかどうか分かりません。裁判所は現地に行って確認することはしませんし、確認できたとしても、それが妥当かどうかの判断ができません。他の資料で、希望する分割線が妥当かどうか判断してもらうことになります。
すでに家が建っていて、その敷地の範囲で分割するのが妥当な場合には、建築確認書類などから分かる敷地範囲を測量図の上に記載して、分割線の妥当性を判断してもらうことができる可能性はあります。
いずれにしても、希望する分割線が妥当だという証明が必要になります。また、その分割方法で、分割後の土地の価格の差額についても、証明する必要があり、不動産鑑定士に価格評価を依頼する必要もあります。
このように測量図に希望する分割線を引いて、その妥当性を証明する必要があります。それに反対する場合で、現物分割を希望する場合には、同様に測量図に分割線を引いて、その妥当性を証明しなければなりません。裁判所に線を引いて決めてくれと言っても、裁判所は決めようがありません。
(2) 共有土地の上に建物がある場合の現物分割
ア.共有土地上に共有者の1人が所有する建物が建っている場合
通常、建物は、現物分割の対象にならないとされます。このため、建物が共有者のうち1名が所有している場合には、共有物の分割は、土地のみについて行われます。敷地に余裕があって、その建物の敷地以外にも十分な面積のある土地がある場合には、建物の敷地を除いた部分を、建物所有者以外の共有者が取得するということで、土地の現物分割が認められる可能性があります。
しかし、敷地に余裕がない場合には、建物の敷地が複数の所有者の単独所有になります(言い換えれば、複数の所有者の土地にまたがって1個の建物が建っていることになります)。
このため、このような場合には、現物分割は認められないとされます(賠償分割や競売による換価分割は認められます。これについては「共有土地の分割と建物」をご覧ください)。
ただし、土地上の建物が取り壊されて土地が更地になれば、土地の現物分割ができることになります。
土地の共有者は、それぞれ持分に応じて、土地全体を使用できる権利があります。このため、他の共有者の承諾を取らないで、土地上に建物を建てること自体は可能です。
しかし、この場合には、他の共有者が持分の過半数を持っていて、建物の取り壊しを求める場合には、建物の取り壊しをしなければならないのが原則です(民法252条1項)。一旦、他の共有者全員の同意をもらって、建物を建てた場合には、過半数の共有者が請求したとしても、建物を所有している共有者の同意がないと、取り壊しを求めることはできません(同条3項)。
イ.共有土地上に共有者全員が共有する建物が建っている場合
建物自体は、現物分割ができないとされます。
そのため、現物分割が認められるとすると、土地のみの現物分割になります。しかし、この場合も、分割されて、単独所有になった複数の土地の上に、建物が建っていることになります。
このため、このような現物分割は認められないとされます。
建物を取り壊して更地にして、土地を分割することは可能ですが、建物の取り壊しのためには共有者全員の合意が必要になります。
ウ.第三者が所有する建物が建っている場合
この場合も、建物を取り壊して、土地を更地にできるかどうかが問題になります。
この場合は、第三者が土地上に建物を建てている権利(敷地の利用権)が問題になります。共有者全員との間で、借地権が設定されている場合には、借地権を終了させることが原則としてできません(*1)。建物が建っている状態で、土地の現物分割をしても、関係が複雑になるだけです。共有のままで、地代を分け合った方が合理的です。
これに対して、共有者全員との間で、使用貸借をしている場合には、使用貸借を終了させて、建物の取り壊しを要求できる可能性があります。ただし、使用貸借の終了は、借主が使用貸借をした契約目的によります。建物を建てることを目的にした土地の使用貸借ですから、数十年が経過して、建物を使用するために必要な期間が経過したと言えなければ(必ずしも、建物が老朽化して使用できなくなる必要はありません)、使用貸借は終了しません。土地の現物分割をしたいので、使用貸借を終了させたいと言っても、それだけでは使用貸借の終了を主張できません。
建物の所有者が、土地の不法占拠をして、建物を所有している場合は、土地の共有者は、建物の収去、土地の明け渡しを請求できます。
これに対し、共有者の1人が他の共有者の合意なしに第三者に対して敷地利用権を設定した場合には、その共有者が共有持分の過半数を持っていたとしても、借地権の設定はできないとされています。ただし、過半数の持分があれば、使用貸借の設定は可能とされているので、過半数の持分のある土地の共有者が設定した場合には、建物の所有者は使用貸借の借主になります。過半数がなければ、敷地利用権そのものが無効なので、無権限で土地を利用していることになります。
(*1) 借地権の終了については、借地の法律相談の「借地の更新拒絶(借地権終了の正当事由)」をご覧ください。(▲本文に戻る)
3.関連記事
●裁判による共有物分割の一般的な解説は、「共有物の分割の基礎知識」をご覧ください。
●共有土地の上に共有者の一部が所有する建物がある場合、土地の共有物分割で、その上の建物がどうなるのか、については、「共有土地の分割と建物」をご覧ください。
●遺産分割前の共有と通常の共有が競合している場合(共有物の分割をしようとしたら、共有者の1人が亡くなり、その持分について遺産共有が生じた場合や、遺産分割前の共有持分が第三者に譲渡された場合)については、相続の相談の「通常共有と遺産共有が併存する場合の分割手続」をご覧ください。
●賃借権による借地権の準共有の分割については、借地の相談の「共有借地の分割」をご覧ください。
(この記事は、2026年6月に書きました。)
弁護士 内藤寿彦 (東京弁護士会所属)
内藤寿彦法律事務所 東京都港区虎ノ門5-12-13白井ビル4階 (電話 03-3459-6391)
